「絆」-small table- vol.2 INTERVIEW:熊野亘

small tableを作ったきっかけのこと。

どういう家具を目指したのか。こだわった色々なこと。

1点ずつ大切に作る家具に願うこと。

ものが溢れ、どこにいても欲しいものが手に入る時代。
それは本当に私たちが求めたものなのか。

デザイナーが思う、理想の家具のお話。

「2008年に僕が青山で展示していたダイニングセットをpourannickの田中さんが気になると言ってくれて、
連絡を頂いたんですよ。そこからですね。オリジナルの家具を作ろうって話を頂いたんです」

熊野さんがフィンランドから帰ってきたばかりの年に、pourannickで家具を作ったきっかけを話してくれた。

novelaxという若手デザイナーチームに所属しているデザイナー熊野亘がPINSというダイニングセットを
青山で展示した時に作ったDM、
これが家具店のオーナーとデザイナーの理想を目指す行程の始まりだったと言う。

novelax\preview2008
novelax\preview2008

「まずどういう家具を作ろうかって話になった時に、
田中さん(プールアニック代表)が好きな北欧の名作ソファがあって、それのスタディから始めたんです。

まずはアンティークのそのソファを買ってきて、みんなで座ってみてあーでもないこーでもないって話しながら
スケール[寸法]をとったりして。

アンティークだから座面がもうつぶれてたんですけど、
でもその座り心地に近いものにしようってなったんです」

ものを長く使おうという時代にきて、熊野さんが考えるのは座り心地の良いイスであるという。

80年代などに多く出回った、家にある事でステータスとなる様な変わったイスではなく、
長い時間をかけて家に馴染んでいく、毎日新鮮な目で見れる座り心地の良いイスだ。

「クッションの素材が背もたれと座面で違うんですよ。
背もたれはウレタンで、座面にはコイル[バネのようなもの]を使ってるんです。
コイルはベッドなんかに使われるもので、かなり贅沢な作りになっています。

コイルもいろいろ試して座った時にぐっと体が入っちゃうんじゃなくて、
表面を感じて、そこから沈むみたいな、そういった座り心地にしました」

自分たちの目標となる座り心地を決めて、それを目標にリサーチとスタディを続けてきた。

何度も図面を書いてプレゼンテーションをしながら試作にたどり着いたのが半年後。

写真を撮ったりムービーを作ったり、みんなのこだわりをこめてラウンチ[売り出し]したのが2年後だった。

スモールテーブル撮影風景

スモールテーブル撮影風景2

スモールテーブル撮影風景3

smalltableに使われた木材はヨーロッパ・ビーチという柔らかな白が特徴のブナ材。
この木材を選んだのにも訳があった。

スモールテーブルヨーロピアンビーチ

「最近明るい雰囲気の家って多くなってきてて。
白い壁で、自然光が入ってきて、そこにナチュラルな素材をアンティークなものと一緒に置いたりとか。
そこに馴染むようにしたくて。
一番最初に東北にある家具を作る工場に行った時に、
うちにいますごくいいブナがあるんですっていう話になって、それであの木を選んだんです。
まぁ僕が白木を好きだっていうのもありますけど(笑)」

ここ数年、安価でデザインがそこそこいい家具が出回っている。

それに対して1点1点しっかりと作られた家具はどうしても高価で、手が出しにくい現状がある。

こういった時代の流れにデザイナーとしてどう思うのか。

「今ものを長く使おうって時代だから、そう言う家具が売れだして5〜6年たったのかな、
大量生産で出回ったものが壊れ始める頃だと思うんですよ。
そこでみんな、こういう家具ってどうなんだろうって思い始めるんじゃないかと。
一つのものを長く使おうってなったらsmalltableの大量生産にはない良さっていうのに
気づいてもらえるんじゃないかなと思うんです。」

ちょっと捻くれた意見を言えば、安いものにそれでも手が伸びてしまう現実は中々変えがたい。
世の中の不況を思えばなおさら。

「大量生産家具が飛ぶように売れたことのひとつに、露出が多かった事もあるんですよ。
多く目に入ってくるから手を出しやすい。これからsmalltableもいろいろ打出していこうって企画もあるんです。
どんなものでも、まず見てもらわなければ始まらない。」

TVのCMや雑誌で値段と家具が大きく宣伝される大量生産家具、そのコンセプトもわかりやすいものが多い。

見てもらうだけで始まるものなのか。

「知っているのと知らないのでは全然ちがいますから。
それに1点ずつ作られた家具っていうのは長持ちするってだけじゃなくて、ちゃんと考えられててお金もかけられて作ってますよね。」

そこを知らない人がとても多いことを踏まえながら、熊野さんはこう締めくくった。

「理想は、使って頂いて、それを徐々に感じていってもらえればと。
僕は、そういった説明無しに良いって思ってもらえる家具を作っていきたいって思うんです。

この商品を見て、一度座ってみて「あ、いいな」って思ってもらえる様なイスとかソファを作っていきたいなと。

それで座ってみて、座り心地良くて、長く使えるんならサイコーじゃないですか」
デザイナーとスタッフと工場の方とみんなのこだわりが込められた家具。

smalltableは60年以上前の名作から生まれかわったという、そんなお話。

small table hp:
http://www.pourannick.com/smalltable/

文:花宮久絵


「絆」-small table- vol.1

-2012/02/05投稿分‐

絆というものを改めて考える1年でした。

普段は筆記具に触れている私ですが、色々な人が筆記具を持って店に訪れます。
インクの出ない万年筆の修理やペンのノックがおかしいボールペン、海外で買った製品のリフィルを探していたりと様々ですが、
みんなその筆記具を大切にしているのがわかります。
キャップに名前が彫ってあったり、10年以上前のモデルだったり、中にはそのエピソードを話してくれる方もいます。

この前舶来品のボールペンを持ってきた方は、インクが手に入りにくくても、もう古い型であっても、子供たちが贈ってくれたものだから使い続けたいのだと笑って話してくれました。
ある時親子連れで万年筆の修理に来られた方は、ペン先と内部の機構を点検する私の前で、物はこうして修理して使うんだよと子供に話し聞かせていました。

そんな人と人の繋がりをむすぶ事が出来て、喜んでもらえる。
絆を繋ぐ仕事に感謝出来たのも昨年ゆえにだと思います。

pourannickに「SMALL TABLE」というソファがあります。
ちいさなテーブルのついたおおきなソファは、デザイナーとスタッフとプレスとフォトグラファー、色々な方の思いによって2年がかりで生まれた家具です。

スモールテーブル撮影風景7

どこから見ても美しいソファであるように、使う木材にこだわり、張り地や中のコイル、脚の丸みやテーブルの厚みに至るまで丹念に作られています。

このソファが多くの人の絆で生まれたように、SMALL TABLEは人の絆を結んでいけるようになるのではないかなと思います。

小さなテーブルに飲み物を置いて、ホームシアターを楽しむにもいいでしょう。
電話を置いて尽きる事の無いおしゃべりをしてもいい。
親子で絵本を読んだりするのも素敵。

座ることだけを求めているなら、数えきれないほどのソファがありますが、ほんとうに欲しいものは「座る」ということでしょうか。
本当に欲しいものは、なにか。
求める物が「座る」とは違うかなと思ったら、このちょっと大きなSMALL TABLEを見にきて下さい。

あなたがほしいのは何かを確かめるために。
なぜこのソファが絆を繋ぐのか、きっとわかってもらえると思うから。

次回はこの特別な家具について、もう少しお伝えしようと思います。

スモールテーブル撮影風景8

文:花宮 久絵


「絆」-small table- vol.1

2011年は日本にとって本当に大きな年だったと思います。

たくさんの悲しい事や嫌な事を経験し、たくさんの素敵な事や嬉しくなる様な事がありました。

それは今でもまだ続いていて、忘れてはいけない事として日本人の心に刻まれたのではと思います。

私個人も大切な友人とその家族とを失いました。
何もかもが一瞬で
だけど目の当たりにした現実は言葉にできる様なものではなくて

ひどく落ち込んでいた時にたくさんの人が立上がりました。
たくさんの人が助け合おうと手を出し合って、その繋がりはどんどん大きくなって今は本当に大きな絆になって日本を支えている。
私の手からこぼれ落ちたものはもう戻らないと気づいたからこそ
今手の中にあるものはしっかり握っていきたい。
そうして誰かの手からこぼれ落ちそうなものを一緒に支えていけるようにありたいと思いました。

絆というものを改めて考える1年でした。

普段は筆記具に触れている私ですが、色々な人が筆記具を持って店に訪れます。
インクの出ない万年筆の修理やペンのノックがおかしいボールペン、海外で買った製品のリフィルを探していたりと様々ですが、
みんなその筆記具を大切にしているのがわかります。
キャップに名前が彫ってあったり、10年以上前のモデルだったり、中にはそのエピソードを話してくれる方もいます。

この前舶来品のボールペンを持ってきた方は、インクが手に入りにくくても、もう古い型であっても、子供たちが贈ってくれたものだから使い続けたいのだと笑って話してくれました。
ある時親子連れで万年筆の修理に来られた方は、ペン先と内部の機構を点検する私の前で、物はこうして修理して使うんだよと子供に話し聞かせていました。

そんな人と人の繋がりをむすぶ事が出来て、喜んでもらえる。
絆を繋ぐ仕事に感謝出来たのも昨年ゆえにだと思います。

pourannickに「SMALL TABLE」というソファがあります。
ちいさなテーブルのついたおおきなソファは、デザイナーとスタッフとプレスとフォトグラファー、色々な方の思いによって2年がかりで生まれた家具です。

スモールテーブル撮影風景7

どこから見ても美しいソファであるように、使う木材にこだわり、張り地や中のコイル、脚の丸みやテーブルの厚みに至るまで丹念に作られています。

このソファが多くの人の絆で生まれたように、SMALL TABLEは人の絆を結んでいけるようになるのではないかなと思います。

小さなテーブルに飲み物を置いて、ホームシアターを楽しむにもいいでしょう。
電話を置いて尽きる事の無いおしゃべりをしてもいい。
親子で絵本を読んだりするのも素敵。

座ることだけを求めているなら、数えきれないほどのソファがありますが、ほんとうに欲しいものは「座る」ということでしょうか。
本当に欲しいものは、なにか。
求める物が「座る」とは違うかなと思ったら、このちょっと大きなSMALL TABLEを見にきて下さい。

あなたがほしいのは何かを確かめるために。
なぜこのソファが絆を繋ぐのか、きっとわかってもらえると思うから。

次回はこの特別な家具について、もう少しお伝えしようと思います。

スモールテーブル撮影風景8

文:花宮 久絵