JEAN-MICHEL OTHONIEL「MY WAY」展

ラカンの大きな結び目
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

原美術館で行われているJEAN-MICHEL OTHONIELのMY WAY展を観に行ってきました。

最初の部屋に「わたしのベッド(Mon Lit)」があり、

わたしのベッド(Mon Lit)
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

それを見守るように壁際に添えられた「バナーNo,7」「バナーNo,9」

バナーNo7-No9
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

色鮮やかでどこか幻想的、不思議な親近感を抱く展示にどきどきしながら通路を歩いて行くと、
JEANがインスピレーションを受けた風景に出会える。

水彩画
水彩画
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

そしてポスターにも使われている作品「涙(Lagrimas)」

閉じられたガラスの中に入った水にさまざまなモビールがうかんでいる。
5mもあるテーブルに並ぶこの作品は、歩くとその奥にある作品が歪み、にじんで、別のにじんでいた作品が形を成して行く様子がとても美しい。

色とりどりのガラスに包まれる世界はとても女の子の好きそうなロマンチックな空間に思える。
でも
パンフレットを読み返すと
「生と死」「自由と苦悩」「美と官能」
の文字が目に入る。

ベッドは起きて眠る場所、生と死の暗喩でもある。
それを見下ろすガラス玉は、どろどろと溶けたものから生まれている。
悩み、傷つき、そのパターンが人によって様々であるように自由であり苦悩する素材としてみる事も出来る。
この「涙」も水の中にうかぶモビールはとても綺麗だが、ふと振り返ると、この部屋にはいくつも天井から吊り下げられたガラスの作品がある。
水の中に浮いているものは、何か。

後からそんな気にさせられる。
近年の作品「ラカンの大きな結び目」は鏡面ガラスと金属によるものです。

ラカンの大きな結び目2
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

哲学者ラカンは鏡に映った自分を見て初めて自己を認識するという理論を提唱しています。
(わたしには難解過ぎてその程度にしかわかりませんが)
でもこの作品を見て、ラカンについて調べると、見方が変わってきました。
DNAの様な連鎖し絡まり合いながら規則的なガラスに、「自由と苦悩」を表現したものかと思っていたのですが、「美と官能」の方にも受け取れます。

鏡、他者によって自己を認識する。

わたしは人の目に映る自分をあまり意識しないのですが、誰かの目に映るわたしは全て違う形なのかもなんて感じたりしました。
JEANはいろいろな素材でテーマを表現してきていますが、わたしも見た目や感じ方はどう変わっても、芯の揺るがないそんな人間になりたいです。

生と死、自由と苦悩、美と官能
さまざまな思いが結晶するオトニエルの世界

色鮮やかなガラスを素材にした装飾的で官能的な作品で知られるジャン=ミシェル オトニエル。
2011年春、パリのポンピドゥーセンターにて幕を開けた回顧展「マイ ウェイ」では、
20万人という記録的な入館数を動員しました。
原美術館では、パリ市民を魅了したその「マイ ウェイ」展を、かつて邸宅であった当館の空間にあわせて再構成し、
珠玉の迷宮へと変貌させます。
オトニエルが歩んできた道のりは決して平坦なものではありませんでした。
初期には自らの表現に適した素材を探し求め、硫黄や蜜蝋など可変性の素材と格闘し、
心の傷や苦悩を刻むエモーショナルな作品を制作していました。
後にガラスに関心を持ち、脆く透明なガラス玉を連ね、自然の風景と溶け合うように作品を展示。
そして近年は、メタリックに輝く鏡面ガラスの大型作品で新たな境地を開いています。
本展では、初期作品から最新の大型立体まで約60点を一挙公開。周囲に左右されることなく
”マイウェイ”を貫いてきた作家の25年の歩みを展観します。
生と死、自由と苦悩、美と官能など、さまざまな思いや概念が結晶したオトニエルの世界をどうぞご覧ください。

+展覧会名 ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ
+会期 2012年1月7日[土]—3月11日[日]
+主催 原美術館
+共催 ポンピドゥーセンター
+特別協力 フランス大使館,フランス観光開発機構
+助成 INSTITUT FRANÇAIS
+協賛 ボンポワンジャポン株式会社、Saint-Justガラス
+協力 ヤマトロジスティクス株式会社
+開館時間 11:00am—5:00pm[水曜日は8:00pmまで、入館は閉館時刻の30分前まで]
+休館日 月曜日
+入館料 一般1,000円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引き

文:花宮 久絵


「絆」-small table- vol.1

2011年は日本にとって本当に大きな年だったと思います。

たくさんの悲しい事や嫌な事を経験し、たくさんの素敵な事や嬉しくなる様な事がありました。

それは今でもまだ続いていて、忘れてはいけない事として日本人の心に刻まれたのではと思います。

私個人も大切な友人とその家族とを失いました。
何もかもが一瞬で
だけど目の当たりにした現実は言葉にできる様なものではなくて

ひどく落ち込んでいた時にたくさんの人が立上がりました。
たくさんの人が助け合おうと手を出し合って、その繋がりはどんどん大きくなって今は本当に大きな絆になって日本を支えている。
私の手からこぼれ落ちたものはもう戻らないと気づいたからこそ
今手の中にあるものはしっかり握っていきたい。
そうして誰かの手からこぼれ落ちそうなものを一緒に支えていけるようにありたいと思いました。

絆というものを改めて考える1年でした。

普段は筆記具に触れている私ですが、色々な人が筆記具を持って店に訪れます。
インクの出ない万年筆の修理やペンのノックがおかしいボールペン、海外で買った製品のリフィルを探していたりと様々ですが、
みんなその筆記具を大切にしているのがわかります。
キャップに名前が彫ってあったり、10年以上前のモデルだったり、中にはそのエピソードを話してくれる方もいます。

この前舶来品のボールペンを持ってきた方は、インクが手に入りにくくても、もう古い型であっても、子供たちが贈ってくれたものだから使い続けたいのだと笑って話してくれました。
ある時親子連れで万年筆の修理に来られた方は、ペン先と内部の機構を点検する私の前で、物はこうして修理して使うんだよと子供に話し聞かせていました。

そんな人と人の繋がりをむすぶ事が出来て、喜んでもらえる。
絆を繋ぐ仕事に感謝出来たのも昨年ゆえにだと思います。

pourannickに「SMALL TABLE」というソファがあります。
ちいさなテーブルのついたおおきなソファは、デザイナーとスタッフとプレスとフォトグラファー、色々な方の思いによって2年がかりで生まれた家具です。

スモールテーブル撮影風景7

どこから見ても美しいソファであるように、使う木材にこだわり、張り地や中のコイル、脚の丸みやテーブルの厚みに至るまで丹念に作られています。

このソファが多くの人の絆で生まれたように、SMALL TABLEは人の絆を結んでいけるようになるのではないかなと思います。

小さなテーブルに飲み物を置いて、ホームシアターを楽しむにもいいでしょう。
電話を置いて尽きる事の無いおしゃべりをしてもいい。
親子で絵本を読んだりするのも素敵。

座ることだけを求めているなら、数えきれないほどのソファがありますが、ほんとうに欲しいものは「座る」ということでしょうか。
本当に欲しいものは、なにか。
求める物が「座る」とは違うかなと思ったら、このちょっと大きなSMALL TABLEを見にきて下さい。

あなたがほしいのは何かを確かめるために。
なぜこのソファが絆を繋ぐのか、きっとわかってもらえると思うから。

次回はこの特別な家具について、もう少しお伝えしようと思います。

スモールテーブル撮影風景8

文:花宮 久絵