湿度の話
見上げるとどこかくすんだ空の色、どこか空気さえ重い様な気がする季節。
ああもう梅雨なんだなと知るのは案外、天気予報を「見る」事より雲の多さや、
突然の雨とか、髪型がうまくまとまらなかったりとか「感じる」事の方が早かったりします。
湿度は空気中に含まれている水分の割合で、これが高すぎるとものがカビやすくなったり、
なかなか寝付けなかったりして、逆に低すぎれば肌の乾燥が気になったり風邪をひきやすく
なったりしますよね。
目には見えないけれど、たしかに私たちを包んでいるこの水分は思っている以上に
日々影響を与えてきています。
そして四季のある日本で、それを強く感じられるのが梅雨というわけです。
一般的に快適と言われる湿度は、40〜60%の間。
同じ湿度でも環境で感じ方も変わってきます。
冬場なら湿度が高めのほうが温かく感じられたり、夏場なら低めの方が涼しくて
心地よかったりするんです。
これからならエアコンの効きが良くないと感じたら除湿器などで湿度を下げてみて下さい。
目には見えないけれど、確実に私たちをとりまいているこの湿気。
今でこそ技術が発達して除湿も加湿もできますが、それまではどうしていたんだろうかとふと考える。
なんとなくそんな話を母にしてみました。
昔はね、女の子が生まれると桐の木を植えたのよ。
一体何の事かと思っていれば、私が子供の頃からある古びたタンスの話を持ち出してきた。
ほら、あれ。あのタンスは私が結婚した時に作ったものなの。
桐は湿気に強いし、カビにも強いからタンスにはすごくいいのよ。
桐は15年もすればタンスが作れるくらいの大きさになるから、婚礼家具にもよくつかわれたの。
今はどうか知らないけどね。
だからあのタンスもあんたのお母さんみたいなものよ、大事になさい。
なんてよくわからないまとめ方をして、母は懐かしそうに笑っていましたが。
昔は今のように湿度を数値で見たり、コントロールする方法がなかったけれど、そのかわりに
感じ取ることが強かったのかもしれません。
一つの家具を作るにも、他の木より桐は中のものがカビないとか、虫がつきにくいとか、
多くの人たちの経験や感じ方がまとまって主流となっていたのでしょう。
湿度や気温は今では数値としてすぐにわかるけれど、もう少し感じてみても良いのかもしれません。
暑くて肌がべたついたりするこの季節は、ある意味では感覚をつかういい機会なのでしょう。
目には見えないけれど、確かにあるもの。
見る事に慣れて、感じる事を忘れていませんか。
毎年やってくるじめじめした季節、心地よく過ごす方向を探り当てていくというのも憂鬱に
なりがちな季節を楽しくする一つの方法かもしれませんね。
文:花宮久絵